カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、9月15日、$45億全てのヘッジファンド運用資産を売却すると発表しました。CalPERSによる時価$2980億の移転は、業界の先導者となるかもしれません。この決定は、多くの年金組織がリスク管理ツールとしてのヘッジファンド運用を再検討している時に行われました。1
この十年間に、複数の年金ファンドがそのポートフォリオの一部をダウンサイドのプロテクションとしてヘッジファンドに配分し、長期にわたるリスク調整後のリターンを引き上げてきました。CalPERSは、そのヘッジファンドプログラムの目的は、「ある程度のリターンを国際株式市場よりも大幅に低いボラティリティと相関で提供すること」であったとしています。2 同プログラムの追加的目的は、「現在ファンド総額にあるリスクとは異なるリスクへのエクスポージャーを慎重に取ることで追加的分散手段をファンド全体」に提供することでした。3
社会通念では、ヘッジファンドのリターンは株式市場への相関は低いと考えられています。そのため、ヘッジファンドへの投資が含まれる分散ポートフォリオは、リスクを減らすであろうと考えます。しかし、そうとは限らないのです。
世界的金融危機は、ヘッジファンド(および他のほとんどの資産クラス)で問題が発生するようなシステマティックリスクの一例です。この種のリスク(世界経済危機、大幅な金利変動、不況、戦争など)は、全ての市場や市場区分に内在します。システマティックリスク事象は、発生確率は低いものの、発生した場合にはポートフォリオ価値に大きなマイナスの影響を及ぼし得ます。こうした広範な市場の出来事は、記録にあるポートフォリオのボラティリティの最も大きな上昇のいくつかの原因です。例えば金融危機の間、多くのヘッジファンドのパフォーマンスはひどく、ほぼ全ての資産クラスで軒並み下落しました。The Wall Street Journal紙の報告によると、2008年中、総合ヘッジファンド・インデックスは、19%下落し、22.2%下落したパッシブ運用のVanguard Balanced Index Fundよりもほんの少し結果がよかったにすぎません。4
システマティックリスクを解決する一つの方法は、下落市場において資産クラスの内部相関に依存しないリスク管理のオーバーレイを追加した分散ポートフォリオの組み合わせによるものだと考えます。
ヘッジファンドのパフォーマンスと手数料
CalPERSのCIOであるTed Eliopolousは、会社のヘッジファンドの売却がパフォーマンスに関係することを否定しました。5むしろ、その複雑性、高い手数料、そしてヘッジファンドのプログラムを戦略的に使いやすい規模にすることができない点を挙げました。ヘッジファンドの世界では、広く異なり、またしばしば意図的に覆い隠された戦略を採用しています。これにより、特定の配分目標の一つの資産クラスとしてグループを区分するのは困難になっています。2月には、CalPERSはこれに気づき、ポートフォリオにおけるヘッジファンドの位置づけを目標配分のある資産クラスから一つの「プログラム」へと変更しました。
CalPERSの全ポートフォリオの1.5%では、CalPERSの全パフォーマンスに対するヘッジファンドの影響は取るに足りませんでした。CalPERSによると、影響を持つには、ヘッジファンドのプログラムが$300億や$400億といった規模になる必要があるでしょう。6月末までの1年間に、CalPERSはヘッジファンドの手数料に$1億3500万を費やしており、その運用資産の4%に上ります。これが$400億となった場合、その手数料は$13.5億に上るでしょう。6CalPERSのスポークスマンであるJoe DeAndaは、最近、ヘッジファンドのリターンはそのコストに見合っていないと述べています。7
世界全体では、現在10,000を超えるヘッジファンドが$2.8兆ドルもの資産を保有しています。競合するポジションで傑出する必要性が、多くのヘッジファンド・マネージャーにより高いレバレッジを取らせる原因になっています。New York Timesの報告によると、CalPERSのスポークスマンDeAndaは、「報われるというという強い信念があれば、リスクを取る用意はあります。ヘッジファンドでは、それはできないでしょう。」と説明しました。8
Milliman Financial Risk Management LLCについて
フィナンシャル・リスク・マネジメントの世界的リーダーであるMilliman Financial Risk Management LLC(ミリマンFRM)は、世界中の運用資産に対し、投資顧問、ヘッジ、コンサルティングのサービスを提供しており、その総額は$1500億(2014年9月30日現在)です。ミリマンFRMは、世界最大規模の独立系アクチュアリーおよびコンサルティング会社の一つであるミリマンの子会社です。
1 Fitzpatrick, Dan (15 September 2014). “Calpers to Exit Hedge Funds.” The Wall Street Journal. 検索元: October 13, 2014 from http://online.wsj.com/articles/calpers-to-exit-hedge-funds-1410821083.
2 CalPERS (9 August 2012). Absolute Return Strategies. 検索元:October 13, 2014, from http://www.calpers.ca.gov/index.jsp?bc=/about/career/experienced-professionals/investment/absolute-return.xml.
3 CalPERS Investment Committee (18 March 2013). Proposed Revision of the Absolute Return Strategies Program Policy. 検索元:October 13, 2014, from http://www.calpers.ca.gov/eip-docs/about/committee-meetings/agendas/invest/201303/item07c-00.pdf.
4 Lahart, Justin (16 September 2014). “Calpers Shows Masters of Hedge-Fund Universe Have No Clothes.” The Wall Street Journal. 検索元:October 13, 2014, from http://online.wsj.com/articles/calpers-shows-masters-of-hedge-fund-universe-have-no-clothes-heard-on-the-street-1410903036.
5Calpersの昨年度のヘッジファンド投資リターンは7.1%でしたが、同国際株式のリターンは28.4%、また同全体の投資リターンは18.4%でした。同様に、この十年間のCalPERSのヘッジファンド投資からの年換算利益率は、4.8%。
Stewart, James B. (26 September 2014). “Hedge Funds Lose Calpers, and More.” The New York Times. 検索元:October 13, 2014, from http://www.nytimes.com/2014/09/27/business/in-calperss-departure-a-watershed-moment-for-hedge-funds.html?_r=0
Marois, Michael B. (15 September 2014). “Calpers to Exit Hedge Funds, Divest $4 Billion Stake.” Bloomberg Businessweek. 検索元:October 13, 2014, from http://www.bloomberg.com/news/2014-09-15/calpers-to-exit-hedge-funds-citing-expenses-complexity.html.